つくば100キロウォーク感想 その5

  • 2013.06.29 Saturday
  • 13:49

                                                                                                        Kさん(30歳)
去年の10月、ワンデーポートに入所して3ヶ月ほどたったときに、初めて100km walk(三河湾100km歩け歩け大会)に参加しました。52km地点での肉離れによるリタイヤ、仲間は皆100km完歩している中での一人だけのリタイヤでした。正直悔しかった。何度も自分に言いきかせるように「自分はがんばったんだ」と言っていました。

 それから7ヶ月、正直歩くことに対しての練習はしていませんでした。なので、今回は不安と期待が混じり合う中で、当日を迎えました。「その一歩踏み出せば変わる」ワンポTシャツを全員で着て、心を一つにするため、前日には勝つカレーとかけたカツカレーを皆で食べ、気合を入れました。その時点で笑顔の者もいれば、緊張で言葉を詰まらせる人もいました。 朝7時45分に瀬谷駅集合でつくばへLet’s go!! 思い思いの話をしながら到着は11時ごろでした。会場は沢山の笑顔と気合の熱気でムンムンしていました。最初に各自のゼッケン番号での抽選会がありました。商品はお米!!皆、気合充分で、「惜しい」とか言いながら誰も当たりませんでした。やっぱり、その辺の才能は一人もありませんでした。
 ワンポTシャツに興味を示したのか、2人の男女に声をかけられ「どんな団体なんですか?」と聞かれました。僕は仲間のNさんと顔を見合わせ、「人生に失敗した人たちの集まりです」と答えました。とても不思議そうな顔をしていました。
 そんなこんなで13時になりスタートしました。やはりタイムを気にしている人たちはグイグイと先に行きました。僕は仲間のNさん、Kさんと3人でゆっくり歩きました。途中、筑波山を横に「自然は良いね」「ギャンブルやっているときは、こういうこと全然楽しめなかったね」とか言いながら、ミーティングのように歩きました。さらに進むとTシャツに興味を持ってくれた人たちと合流し、話しながら歩いていました。10Kmぐらいからは、NさんとKさんとまた3人でゆっくり歩き、40km地点前までミーティングウォークを楽しんでいたら、折り返してくる仲間に続々と会い、「力」をもらえました。40Kmの折り返しから「ちょっと先に行くね」と言ってペースアップしました。前を歩いている仲間と合流したいと思い歩いていたのですが、誰にも会いませんでした。50Km地点あたりで再びTシャツに興味を持った女性の方(以後、女性のNさん)に会い、またしてもミーティングウォークが始まりました。その方は、俗に言う健常者ですが、人生での経験は数しれず、お互いに少しずつ本音と過去を正直に話しだしました。
 そんなこんなしている間に60km地点に到着しました。仲間のIさんに会い、話していると、いつのまにか、合流したかった仲間を抜いていました。それも、40km〜60kmまで休まずに前に進んだからでした。このあたりから足の痛みを感じ始めていましたが、またもや、女性のNさんとのミーティングウォークとなり、僕は彼女の背中にかなり助けてもらい72km地点までやってきました。この時点で足は痛すぎるぐらいきていました。女性のNさんは先に出て、72kmで会った仲間GさんとOさんを背に一人で出発しました。
 かなりペースダウンしてしまいOさんに追いつかれ、2人で最後の折り返しの80km地点をめざしました。この辺の1kmは本当に長く感じました。何度も「まだかよ」と愚痴りながら、Oさんより遅れて80km地点に到着しました。このとき、一瞬「前回は52kmでそれを越えたし、もう充分闘った。もう止めよう」という言葉がよぎりましたが、僕の気力はまだ尽きてはいませんでした。少し遅れてGさんが到着しました。女性のNさんは待っていてくれて、「話しながら一緒に歩こう」と言ってくれたのですが、僕は「ペースが上がらないから先に行ってくれ」と言いました。テーピングをすべてはずしてしまったので足はさらに痛くなりました。Gさんにはすぐに追いつかれて、追い越されました。Sさんに会い、テーピングをもらって再び歩き出しました。少し行くと、なんと最初に一緒に歩いていたKさんと会いました。Kさんは「すげーここまで来ていたんだ」と感動し、「もう自分はだめだから」とアメちゃんを2個、僕に渡しました。「あとは託した」と言われ、その言葉に涙が出てきました。これはリタイヤなんかできないなと思い、足を引きずりながら最後のチェックポイントの88km地点にたどり着きました。もう体ではなく、気力で歩いていました。 GさんとテーピングをくれたSさんとともにチェックポイントを出ましたが、またもやすぐに先に行かれてしまいました。一人で音楽を聞きながらゆっくり歩き、すれ違う人や追い抜く人たちと「お疲れ様です」や「もう一踏ん張り頑張りましょう」と声を掛け合い、なんとか残り4Kmの地点まで来ました。ここでGさんと会い、少し休憩して、一緒に再び歩き出しました。

 ここからは、本当に地獄でした。1kmが10kmに感じるほどでした。2人はほとんど会話することもなく、淡々と歩いていました。でも、一歩一歩確実にゴールに向かっていました。「この先がこうだった」とか「違う」なんて話していたら、ゴール近くの建物が見えてきました。「やった!もう少しだ」と2人で笑顔にもどるも、この先の500mがまたしても長く、2kmはあるように感じました。「きっと仲間は皆、帰ってしまっただろうね」と残りを歩きながら言っていました。なぜなら、最初にゴールした人とは、もう7時間以上差があるからです。そんな思いで歩いていたら、ゴールの垂れ幕が見えてきました。

 この100kmを歩いた気持ちや、その前の100kmウォーク、もっと前の過去のこと、そして仲間の気持ちが、渦巻き、込み上げてきました。そして、垂れ幕の下では、仲間が手を振っていました。一気に足の痛みが消え、目から涙がこぼれました。仲間と握手をし、抱き合い、涙と感動は仲間の心に連鎖していきました。女性のNさんもゴールで待っていてくれました。僕は、今ギャンブルを必要としない生活をさせてもらえて良かったと実感しました。今までにないほど自分と闘いました。痛みや辛い気持ちが強いときは、音楽で涙しそうになり、その音楽の想い出で涙をしました。過去の愚かな自分を思い出しては涙し、大好きな昔の仲間や彼女、そして、親のことを思い涙しました。本当に辛かった。

 でも今回完歩できたのは、自分の力より、ワンポの仲間、会場で会った仲間、そして、言葉を交わすことはなくとも同じ100kmに挑んだ人たちのおかげです。歩くうちになんか責任感や使命感も出てきましたし、それはリタイヤした人たちへの想いや、ゴールで待っていてくれた仲間への想いだったのかもしれません。

 今、ワンデーポートに来て感じていることは、同じ問題に向き合っている仲間の大切さです。ゴールはありませんが、100kmウォークでも同じだなと感じています。歩く中で心が丸裸になる自分が居ましたし、ミーティングと同じだ、回復とはこういうことなのかなと感じました。言葉はなくとも、仲間を信じること、人を見た目で判断しないこと、他人は自分の鏡だってこと、自分は他人で他人は自分なのだと少しわかってきた感じがします。最初は「何だこいつら、何だここは」と思っていたワンデーポートも、今では“居場所"になり、心安らぐ場所になっています。もう二度と大切なものを失わないよう、正直に生きたいと思っています。親や傷つけた人たち、ワンデーポートのスタッフの皆さん、仲間の皆さん、理解を示してくれる人たち、理解を示してくれない人たち、すべてが自分にとっては大きな力です。感謝の気持ちでいっぱいです。

↓ 30年前のりんりんロード(筑波鉄道)

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