15年の歩みの中で(ワンデーポート通信176号より)

  • 2015.04.06 Monday
  • 15:38

 ワンデーポートは4月で15周年を迎えました。たくさんの皆様に支えられ、ここまで活動を続けることができました。厚くお礼申し上げます。
 今号では、これからの社会の中でのワンデーポートの役割についてまとめます。徒然に書き散らかすような感じになるかもしれません。ご了承ください。

15年前、私たちが考えていたことは……。

・ ギャンブル依存症は進行性の病気であること
・ GA(ギャンブラーズ・アノニマス)に参加を続けること
・ 本人自ら助けを待つことが重要(底つき体験が不可欠)
・ 家族は共依存から回復すること
・ ギャンブル依存症に詳しい医療機関を受診すること
・ 国が主導でギャンブル依存問題の支援に取り組むこと

 開設直後の数年間は、『ワンデーポート通信』でも私は繰り返し「病気である」と伝えてきました。しかし、度々お伝えしている通り、時間の経過、経験を積み重ねる中で、私たちの考え方が変わってきました。
いま、テレビ、新聞からは「ギャンブル依存症という病気がある」と繰り返し伝えられるようになっています。厚生労働省の研究班からは536万人という数字が発表され、行政機関でも精神保健福祉センターなどでギャンブル依存の相談を積極的に行うようになりました。
 15年前のワンデーポートから考えると理想的な形となっているのですが、私たちの考え方が変わったことで、昨今のギャンブル依存問題に対する社会的な取り組みには違和感と同時に危機感を抱いているというのが、正直なところです。
 ワンデーポートの考え方が変わり、なぜ他の支援機関が変わらないのか? その理由を紐解いていくと、日本社会における公的サービスの課題やNPOの果たす役割に行き着くと私は考えています。

「答えがあると思う」と「答えがないと思う」では行き場が異なる
 突然ですが、電車の話です。横浜駅を出た下り電車の話です。根岸線に乗ると、発車すると南のほうに線路は曲がります。東海道線は西に直進し、相鉄線はしばらく東海道線と併走しますが、平沼橋を出ると北方向に曲がって分岐します。3つの線とも横浜駅では、同じように西に向かっていますが、時間の経過とともに風景はまったく違ってしまいます。横浜駅を西に向かって発車しても、到着地点はまったく違う場所になります。
 ギャンブル依存についての考え方も同じではないかと思います。15年前、私たちの考え方と行政機関の考え方と、当時ギャンブル依存を扱っていた医療機関の考えは、ほぼ同じではなかったかと思います。横浜駅で並ぶ下り電車のように同じ方向を向いていたのではないかと思います。しかし、ワンデーポートでは利用者の特性や社会の変化を見ていく中で、軌道修正しました。はじめに分岐したのは、2005年頃で、発達障害に向きあったときではないかと思います。ただ、このときはまだ「依存症モデル」を基本として考えていたので、ほかの支援機関との差はそれほどなかったのではないかと思います。ところが、その後もワンデーポートでは、個別性や社会の変化に伴う利用者の変化に目を向けたことで、支援の方法を見直しが行われ、それに伴い依存問題についての考え方も変えてきました。
 15年の歳月が流れた今、電車の中から見える風景もまったく違うものになってしまったのではないかと思うのです。
 この違いを生んだ根本的な原因は、「答えがあると思う支援機関」と「答えがない、(あるいは)答えが変わる支援機関」との差ではないかと思います。ワンデーポートは後者なのですが、サービスを受ける人を見ることで、考えて、悩んで、工夫していく中で支援の方法やかかわり方を変えてきました。一方、変化のない支援機関が見ているのは「依存症概念」であり、依存症概念こそ、答えだと考えていた(いる)わけです。答えがあると考えるので、時間が経過しても考え方に変化は起きないのだと考えられます。

行政機関での扱い
 昨年末頃、県外のある研修でワンデーポートの考え方をお話する機会がありましたが、そこに参加されていた行政機関の方から、「とても納得した」という感想をいただきました。私が話したことは、ワンデーポートでは従来の考え方は使っていないこと、行政機関が相談を受ける場合も、従来の依存症モデルが有効に働くケースは少ないのではないかという内容でした。その行政関係者も日常業務で相談を受ける中、従来の方法に限界を感じていたという話をしてくれました。
 年に数回ですが、行政関係者の皆様にワンデーポートの考え方を伝える機会があります。参加している皆様には、かなりの割合で納得してもらえるという感覚はあります。しかしながら、行政機関全体の考え方が変わったという印象はまったくありません。「依存症はこういうもの」という常識はそのままで、考え方に大きな変化は現れていません。

行政機関で伝えられるギャンブル依存問題
 下記の文章は、ある行政機関の福祉局が平成23年に作成し、ネットで公開しているリーフレットからの一部抜粋です。

ギャンブル依存症は病気です パチンコやスロットマシン、競輪、競馬、競艇など、成人なら誰でも楽しめるギャンブル。これらが常習的となり、自分でコントロールできず、家族関係の障害、仕事や生活の崩壊など深刻な社会的結果を招いているにもかかわらずなかなか止められない場合、こころの病の一つ「ギャンブル依存症」の可能性があります。 ※病気の場合、意志が弱いわけでも、道徳的に問題があるわけでもありません。ギャンブル依存症は、国際疾病分類ICD-10 では、病的賭博と呼ばれます。
 ギャンブル依存症の特徴は・・・
・ 慢性の、進行する病気です。 借金問題、破産や家庭崩壊、横領・詐欺等の犯罪にいたる可能性や、自殺の危険性が高まります。
・ ギャンブルを自分の意志でコントロールできなくなります。
・  回復できますが、長い時間がかかります。 一時改善しても、ストレス等で再発の危険性が高まります。
・ 自分が病気であるという認識が欠けがちです。 悩んでいても、「ギャンブルなどいつでも止められる」と思いがちで、病気であるとはなかなか気付きません。
 ギャンブル依存症の人をかかえる ご家族へのアドバイス
  ◆ギャンブル依存症や必要な支援について学びましょう。
  ◆家族自身が専門相談機関を利用することも役立ちます。
◆本人の回復を信じ、本人の人格を尊重してください。
◆「家族がすべきこと、してはならないこと」を正しく理解しましょう。
◆家族自身の健康や生活を大事にしましょう。
具体的には・・・ ・本人は意志が弱いわけでも、家族の愛情不足のためギャンブル依存症となったわけでもありません。
・ 家族が対応法などを相談することは、本人の回復にも役立ちます。
・ ギャンブル依存症が病気であることを話し、医療機関の受診あるいは専門相談機関への相談を勧めて下さい。同行も役立ちます。
・ 家族は本人の金銭管理をしないでください。安易な金銭の提供や借金の肩代わりは問題を深刻化します。
・ 「できない約束はしない」、「言ったことは必ず実行する」などの言葉で信頼性を取り戻しましょう。
・  本人の行為による問題は本人自身が責任をとることが原則です。
・  家族は高いストレスにさらされがちですが、地域社会から孤立せず、家族向け自助グループも活用しましょう。


 このリーフレットに記してある内容は、15年前であれば、素敵なパンフレットだと思ったかもしれません。しかし、今は少し違います。このパンフレットを手に取った家族が書いてある通りに行動したら、本人を追い詰めてしまうのではないか、結果、ご本人の生活状況は悪化する可能性があるのではないかと心配になります。
 もちろん、このパンフレットを支持される方もいらっしゃるでしょう。ここに書かれている方法で問題が解決される方もいらっしゃると思います。「ギャンブル依存問題」には様々な考え方があり、様々な支援方法があるので、どちらが正しいとは言い切れないと思います。

誰の考えなのか、相互援助グループの考え方なのか、どの支援機関の考えに基づくパンフレットなのか明記すべき
 ただ、このリーフレットに問題がないということでもありません。15年前であれば、は、「依存症というのはこういうもの」と断定しても異議を唱える人はいなかったのではないかと思います。しかし、いまは様々な支援方法や考え方があきらかになってきています。ワンデーポートでは「共依存」という概念を否定し、進行性の病気という考え方にも異を唱えています。医療関係者の中でも久里浜病院の精神科医の河本先生は、自然治癒があると考えているようです。医療化することに異を唱えている医師もいます。様々な解決方法が提示されていく流れにあります。
 従来の考え方や支援方法が、「ひとつの答え」ではないことが明白になった今、行政機関が、リーフレットを作ったり、相談に応じる場合、考え方の出所はある程度は明確にする必要があるのではないかと思います。
 たとえば、各精神保健福祉センターの考え方なのか、○○医師の考え方なのか。それとも、相互援助グループの考え方なのか、国際的な診断基準なのか、リーフレットには表記する必要があるのではないかと思います。併せて、ギャンブル依存問題には様々な考え方があることも伝えていくことも忘れてはならないことだと思います。

そもそも行政機関で扱う問題なのか?
 話を戻しますが、私が行政機関の支援者にワンデーポートの考え方を伝えると、納得してくれる人が少なからずいます。個の部分では伝わります。しかし、行政機関全体としては変わりません。大方の行政機関の相談窓口では、このリーフレットのような考え方が、相変わらず答えのように示されています。
 私は、こうした状況をもどかしい思いで見ているのですが、行政機関が怠慢だとは思っていません。国からの指示で事業が動き、異動もあるため、個人の経験の積み重ねで事業の方向性を変えることは難しいのではないかと想像しています。
ギャンブル依存はDSM-5で、物質依存と同列に扱われるようになりましたが、現実的には障害と個人の趣向の線引きが曖昧な病気(問題)です。
 身体的障害のように一律に扱えるのであれば、必要な支援は明確であり、行政機関で扱うことで、何の問題も生じないはずです。しかし、依存問題はそうではありません。
 個人差だけではなく、パチンコ台は時代により変化し、依存する人の傾向も社会の変化とともに変わっていきます。障害とカテゴライズされていても、個々の課題は時代の影響を受け、人生の悩みに近い問題と言えるのではないでしょうか。解決方法は一つであるわけがないことも明らかです。このような社会的な課題解決を行政機関主導で行うこと自体に無理があるのではないかと思っています。

ミッション
 以前からお伝えしていることですが、私は、ギャンブル依存問題に関しては、NPOが主導で相談支援にあたるほうがよいサービスを提供できると考えています。
 NPOにはミッション(使命)があります。多様で個別的な課題解決には、サービスを受ける側が、ミッションを参考にして決めるべきではないかと思っています。

ワンデーポートのミッションステートメント(支援の指針)
1.1人ひとりの尊厳を守り、その人らしく生きるためのプログラムを考え提供します。
2.ギャンブルにハマる原因はアディクションのみならず、発達障害や精神疾患などほかの原因もあると考えます。
3.ギャンブルで問題を起こす背景は様々であり、ひとくくりに「依存症」ととらえることはしません。
4. ギャンブルに起因する問題解決のためには、人間と人間が出会い、信頼感や一体感を獲得することが不可欠だと考えます。
5.関係機関など、地域のネットワークを最大限活用します。
6.ギャンブルは社会的行為であり、社会の変化とともに、利用者も変化すると考えます。そのため、援助方針や提供されるプログラムは、時代に合わせ変化するべきものと考えます。

 NPOは、自分たちの存在理由を明確にして、ミッションに沿った方法で役割を果たさなくてはなりません。私がここで記していることは、上記のミッションに沿った考え方です。ワンデーポートのリーフレット、ホームページの内容、本人や家族への支援方法等、すべてミッションが指針となっています。私は行政機関のリーフレットに考え方の出所が明記されていないことを指摘しましたが、NPOと行政機関の違いはここにあるわけです。ワンデーポートは依存問題をどうとらえ、解決していくためにはこういう考え方をしているということを明文化しているわけです。
 ワンデーポートでは、サービスを受ける人に明確に示した上で、使ってもらいたいと思っています。ワンデーポートではなく、他のミッションを持ったNPOがあれば、そのミッションと比べた上で、選択すればいいわけです。どこに行っても同じミッション、同じサービスでないことで、多様で個別的な問題解決に対応できるようになるはずです。

NPOが活躍する社会はサービスの質が高くなる
 個別性があり、社会の中で変化していく課題は、本来NPOが主導に行っていくものです。NPOが主導で事業を行うことで質のよいサービス提供が可能になるはずです。わが国にNPO法人の制度が出来た理由の一つに、行政機関では対応できない、あるいは行政機関ではよいサービスが提供できない事業の担い手が必要だと考えられたためです。
 私は15年間のワンデーポートの活動を通じてNPOの活動の有効性や社会的役割の大きさを感じています。しかしながら、なかなかその特性をいかすことができない、NPOの必要性が伝わらないもどかしさも同時に感じています。

大きな意味で一人ひとりの意識改革が必要
 日本のNPO法人は、公的な制度を使う、つまり行政機関から補助金をもらうことで、事業が硬直化して、新しい発想が出てきていないと一部のNPOの専門家が指摘しています。行政や医療機関の下請けのようになってしまっていて、NPO的な発想が弱くなっているわけです。
 行政機関の下請けのようなNPOの増加の原因は、活動資金の問題です。NPO側にも背に腹は変えられない事情があるわけです。

事業展開するために公的補助金をもらう(制度を使う)
→ 制度に合わせた事業やらざるをえない
→ サービスを提供する人ではなく、制度を主体として考えざるをえない
→ サービスを受ける人や社会の変化を見なくなる(見る余裕がなくなる)
→ ミッションの喪失
→ 事業の継続だけが目的となる

 公的な支援を受けることで、NPOらしさを失くしてしまうわけです。寄付文化が根付いていない日本で、NPOの活動を続けて行くことは簡単ではありません。しかし、公的な補助金に頼っていては、NPOらしさを発揮するNPO法人は育たないと思います。

寄付財源の重要性
 ワンデーポートは日本初の「ギャンブル依存」支援施設であり、開設直後から多くの寄付をいただくことができました。過去も今も財政は脆弱でありますが、公的補助金をもらわずに活動を継続できたのは、寄付をしていただく皆様のお力のお陰です。
 私たちは、制度を使っていないからこそ、個々の人に対し必要な支援を提供できたわけです。制度を使っていないからこそ、柔軟に事業内容や支援方針を変えられたわけです。制度を使っていないからこそ、こうして行政機関に提言を行うことができるわけです。
 ワンデーポートが、他の依存関連の支援機関と違うのは、NPOとしての本分を発揮している点だと自負しています。
 ワンデーポートは認定NPO法人の認定を2011年に取得しました。ワンデーポートに寄付をすると寄付金額に応じて税額控除を受けられます。神奈川県や横浜市にお住まいの方は住民税からの控除も受けることができます。認定NPOに寄付をするということは、国や地方自治体に納税する金額が減額になるわけです。
 納税することと、認定NPO寄付することは、近い関係にあります。社会の問題や課題は税収入から賄われるわけですが、納税も認定NPO法人への寄付も目的は同じです。社会のために、公益性のあるサービスに使われます。税金で納める場合、納税したお金がどのように使う先を決めることはできませんが、認定NPOへの寄付は使い道が寄付者によって決めることができます。
 たとえば、「私は、環境問題を行っている認定NPOに寄付しよう」とか「息子が難病に苦しんでいるから難病の支援を行う認定NPOに寄付しよう」と決められるわけです。
 非常に大雑把な言い方かもしれませんが、皆様が納税されたお金は、行政機関でギャンブル依存の相談にも使われます。サービスを受けられる皆様が、ギャンブル依存の支援はワンデーポートのほうが良いと思えば、寄付という形にすることで、「使われ方」選択できるということです。

NPOの存在価値
 行政機関では立ち行かない、社会的な問題を扱うのはNPOではないかと思います。ギャンブル依存問題だけではなく、社会には様々な課題があり、行政機関よりも、NPOが主体となって取り組んだほうが、よりよい事業展開が可能な場合があります。多様化し、変化の早い現代社会においては、NPOには大きな可能性があると考えられています。NPOが活躍するためには、制度などの縛りのない資金を確保することが、不可欠であります。そのためには、寄付行為の必要性をもっと多くの人たちに知ってもらわなければなりません。国民一人ひとりの意識が変わっていかないと、NPOも発展しないのではないかと思います。
 困った問題が起きたときに、NPOで良いサービスを受けられるかもしれないという認識が広がることで、よりNPOに寄付が集まるでしょうし、NPOのサービスの質も向上するのではないかと思います。

ワンデーポートのこれから
 ギャンブル依存問題は、医療の問題であり、国が主導で支援を行うという流れがあります。IR法案の行方次第では、行政主導の支援へ流れは加速するはずです。一見、問題を抱える人たちにとって救いの手が差し伸べられるように見えるかもしれませんが、本原稿で説明した通り、行政機関主体で扱うことでは有効な支援は提供できないと思います。社会の変化とともに「病気」や「障害」という概念も変わってきている今、NPO的な発想が必要不可欠であることは明らかです。
 NPOに対しての理解が進まない現状では、ワンデーポートらしさを追求していくことは、いばらの道を進むことになると思いますが、この方法こそギャンブル依存の問題に困っている家族、本人に対し有効な道筋を示すことができるはずです。

 ワンデーポートの活動が、継続し発展していくためには、ギャンブル依存問題という枠を超えて、世の中の人たちの意識や考え方を変えていかねばならないと思っています。皆様と一緒に、よりよい社会構築のために尽力していきたいと思います。
これからのワンデーポートを宜しくお願い申し上げます。

行政機関の皆様へ
 本原稿には行政機関の皆様にはやや批判的な内容であったかもしれませんが、ギャンブル依存問題を行政機関に触れてほしくないということではありません。行政機関だから力を発揮できる役割があると思います。将来的には、NPOが主体で行っていくべき問題だと思いますが、今は行政機関の果たすべき役割は大きいと思います。
 私は、同じテーブルで、対等な立場で、意見交換したいと思っています。前号、前前号でお伝えしたとおり家族相談の方法も大きく変化してきています。行政の皆様にも、私たちの、NPOの視点を取り入れた啓発事業や相談事業を行ってほしいと考えています。ワンデーポートの考え方に関心がありましたら、是非、お気軽にご連絡ください。時間の都合がつけば、全国どこでも喜んで伺い、NPOの役割と行政機関の役割についてご説明いたします。真の協働事業の可能性もあると考えています。
 ご理解を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
 

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